ピクシブ株式会社様の学生支援企画でRubyKaigi2025に参加しました。
この記事では、自分が特に気になったセッションについて復習を兼ねつつ紹介します。
私の理解が間違っていたらごめんなさい。訂正・補足などあればコメントやTwitter(@kat0h)で教えてくださると幸いです。
自己紹介
- 学部3年
- Ruby Kaigiは今年で3回目
- 私のGithub: kat0h (Kota Kato) · GitHub
- Twitter: https://x.com/kat0h
- Vim
- こんなコードがすき
day-n
大学でコミッタの斎藤さんと集まり、昨年のRubyKaigiのセッションを観る会をしました。
私は言語処理系が好きなので、RubyKaigiではその周辺を勉強したいなと考えていました。 Ruby本体のセッションの中でも、特にパーサーの話は事前知識がないとついていけないなと感じたので、私のリクエストでパーサーの発表を(解説してもらいながら)見ました。
下記は見たセッションの一覧です。
特に金子さんの発表のインパクトがすごかったです。30分の発表だったのですが、あまりにも話すのが早いかつ濃厚で、途中でとめつつああでもないこうでもないと見ていたら2時間が経ってしまいました。まじかよ
LR(1)/LALR(1)/IELR(1)/PSLR(1)などの関係をある程度整理してから会場に行けたのはよかったです。
day0
水曜日の夜に自宅のある調布から羽田を経由して飛行機で松山に行きました。ANAの飛行機に乗るのは幼稚園以来。孤独のグルメが放送されていました。
なんとか窓側席(非常席座席ですが)を確保したので、外の景色を眺めながら来ました。
松山には21時ごろに到着。お昼ならRubyKaigiの運営さんがチャーターしたバスがあったらしいが、当然夜にあるわけもなく空港の外に停まっていたリムジンバスに乗車。 実のところ、この時点で泊まるホテルの場所を知らなかったので必死に調べながらバスに乗っていました。結局途中の停留所で降りればホテルに行けることがわかったので、新聞社の前で降りて1kmほど歩いてホテルに到着。
0日目の夜はコンビニ飯かなぁと考えていたのですが、SmartHRさんのdrinkupを終えた斎藤さんとちーすけさんにお誘いいただき一緒にご飯をいただきました。 毎度お二方にはめちゃめちゃお世話になっています。
大街道のアーケードにRubyKaigiの横断幕を見つけたりもしました。
そんなこんなでday0は日付が変わる頃に就寝。
day1
朝7時頃に起床。朝食付きの部屋を取ってくださってたので、朝ごはんを食べに行きました。 家から大学まで5分の生活に慣れきってしまっていたので、けっこうきついです。 夜まで集中してセッションを聴き通すためにがんばってご飯を食べました。
会場の愛媛県文化会館まではホテルから徒歩で20分くらいでした。実は路面電車にのればもう少し時間を短縮できたらしいのですが、地理が頭に入っておらず乗れませんでした。
Ruby Taught Me About Encoding Under the Hood (ima1zumiさん)
文字コードと人生の話でした。
👨👩👧👧←この絵文字をirbに食わせたところ、irbがクラッシュしたという出来事をきっかけにコミッタにまで就任したそうです。尊敬しかない。
私自身も、高校の頃はVimにパッチを送るなどちょいちょいOSSにかかわってはいたのですが、継続することがなかなかできていませんでした。
「のめり込むようになってしまいました」という発言心に残っています。本当に楽しそうに発表されていてとてもよかったです。
Make Parsers Compatible Using Automata Learning (makenowjustさん)
個人的にたのしみにしていたセッションその1
現在のCRubyのデフォルトのパーサーであるPrismと、Lramaで生成されるparse.yによるパーサーの挙動の違いを形式的に検証しようという発表です。
2つの異なるパーサーPlとPpが同じ挙動をするかは、パーサーは記号列を入力に取るオートマトンと考えると、L(Pl)=L(Pp)であることを示せばよいことになります。(発表ではL(Pl⊕Po)=∅かどうかを検証していました)
(DFA同士が等価かどうかはそれぞれを最小化することで判定できると思うのですが、プッシュダウンオートマトンだとまた違うのかも、もしくはXORを取れば反例の入力文字列を(比較的)容易に生成できるという事情もあるのかもしれない)
2025/05/06追記
金子さんより、プッシュダウンオートマトンの等価判定についての補足をいただきました。
プッシュダウンオートマトン同士の等価判定は、非決定性の場合は決定不能です。決定性PDAの場合は"The Equivalence Problem for Deterministic Pushdown Automata is Decidable."という論文で決定性が示されています(僕はこの論文を読んでいない)。
— kaneko.y (@spikeolaf) 2025年5月6日
が、具体的な計算量は非常に高く実用的なアルゴリズムはまだ見つかっていないという理解です。
— kaneko.y (@spikeolaf) 2025年5月6日
そもそも発表で扱っていたのはVisibly Pushdown Automataだったので、そもそも違うものでした。
なぜVPAにしたのか(うっかり聞き逃してしまったんだと思います)気になります。発表動画が公開されたら改めてみてみます。
追記終わり
2025/05/15 Pixivのアフターイベントで追加の情報をお聞きしました。
VPAを使ったのは、L*アルゴリズムが適用できる中では一番強いオートマトンだったから
オートマトン同士の比較なら普通に比較しても良いけど(別にandだろうが=だろうがxorだろうがやれることは同じ)、xorなら反例を生成しやすいというのはメリットではあるとのことでした。
追記終わり
Lramaの生成するパーサーに関しては、parse.yを見ればどのような状態集合と遷移規則を持つオートマトンができるかがわかります。
しかし、Prismパーサーは手書きの再帰下降パーサー(prattパーサー)であり、レキサーを内包します。 (下に示した4つ目の記事によるとRubyの文法は文脈依存文法らしいのですが、この文脈の解析をレキサーに投げることでparse.yの文法はLALR(1)に収まっています) ここからパーサーのオートマトンを生成することはかなりの困難を抱えると予想できるはずです。
そこで、この発表では入力と受理するかどうかしかわからないブラックボックスのオートマトンであるLramaとPrismに対してオートマトン学習(L*アルゴリズム)という手法を利用することで互換性を検証したそうです。
私は昨年度大学で形式言語理論の講義を受けました。現代のプログラミングがこの理論の上に成り立っているというのは言わずもがな、、というのはわかるのですが、ここまで応用的に利用できるというのは非常に驚きました。
L*アルゴリズムによるオートマトン学習でパーサーのオートマトンを推測するには、O(kn2) (kは|Σ|、nは状態数)のコストがかかるそうで、Ruby全体の文法を対象に検証するのは現実的でないそうです。
実際、発表でもオートマトン学習に利用するアルファベットはΣ={"a", :, (, )}に限定していました。こうでもしないと計算量が大きすぎるようで、prism全部のオートマトンを生成するといったことは難しそうです。(アルゴリズムが対応できる言語クラスにRubyが属さないので、一部だけを対象にする必要があるという事情もあるはず)
この発表を聞いて仕様書の気持ちになれるプロだけが発見できるものだった互換バグが、ついに誰でも見つけられるようになったのか!!とワクワクしました。
後にお聞きしたのですが、入力にするアルファベットの選定はかなり大変だったそうで、どんな文法ならバグりそうかな〜などの見立てを立てて入力を考えるのはやはりプロしかできないようです。無念....
まったくついていけなかったのですが、自分がいま大学でしている勉強は役に立つんだという実感が得られてとても良かったです。
L*について説明してみる | makenowjust-labs/blog
Operator-precedence parser - Wikipedia
Prism:エラートレラントな、まったく新しいRubyパーサ | gihyo.jp
Rubyパーサーを一新するprism(旧YARP)プロジェクトの全容と将来(翻訳)|TechRacho by BPS株式会社
(Continuation is to be continued)
個人的に聞きたかったのですが、被っていて聞けなかったセッションです。
先日、自作にSchemeの(超小さいサブセットの)インタプリタにcall/ccを実装してから、call/ccという非常に強力な言語機能に心を奪われていました。
発表スライドが公開されていることをydah_さんに教えていただいたので、後で読みたいと思っています。動画の公開が楽しみです。
昼ごはん
お昼ごはんはPixivさんとSMSさんの学生支援企画で来た学生であつまって鯛めしをご馳走になりました。
午前聞いたセッションの感想を話し合ったり、いまやっていることの話を聞いたり楽しい時間を過ごすことができました。SMSさんの学生支援で来た方とは初対面だったので、ゆっくりお話をする機会をいただけて大変ありがたかったです。
愛媛には、炊き込みご飯風の松山鯛めしと刺し身と卵黄を一緒にいただく宇和島鯛めしがあるそうです。今回伺ったお店では、両方の鯛めしを食べ比べることができました。
Ruby's Line Breaks
個人的にたのしみにしていたセッションその2
Rubyの複雑怪奇な改行の仕様を明らかにしようという発表です。
Rubyのプログラミムにはおおまかに下記のような改行に関する規則があります。
Ruby における改行による文の終了を説明するなら
— Tanaka Akira (@tanaka_akr) 2024年12月22日
「Ruby では原則的に文が終了できるところに改行があれば文が終了するが、いくつか例外がある。
例外1: 次行の行頭にメソッド呼び出しのドットがあるなら文を継続する。
例外2: 行末がカンマで終わっていたら継続する。
...」などとなるだろう。
スライドでは、このルールの(よく知られている)例外をいくつか解説していました。
しかし、本当にこれは十分な例外の集合なのでしょうか。。。?という疑問がでてきます。
Rubyの文法はPrismもしくは、parse.yでパースされているはずなので、この例外を探すのはパーサーの実装から形式的に探索できそうです。
今回の発表では、Rubyのparse.yを解析することでこのような例外を見つけ出す方法を提案していました。
そもそも、なぜRubyのparse.yというのはここまで恐れられる存在なのでしょうか。
前提として、多くの古典的なプログラミング言語はその構文解析器にyacc/lexやbison/flexから生成されたパーサーを使っています。これらが受理する構文は多少の差があれども、大抵はLR(1)(=CFG)やLALR(1)の文法に収まっているのが普通です。
しかし、多くのプログラミング言語の構文規則はCFG(文脈自由文法)の中に収まっていないことがあります。パーサーはCFGを受理できる能力しか持っていないわけなので、CFGからはみ出た規則はどうやって処理されるかというとレキサーで吸収されているようです。(lex_stateの話ですね)
RubyのパーサーがLexical feedbackをしているという話の根拠として提示されてました〜
— かとう (@kat0h) 2025年4月30日
> Lexical feedbackをすること(活用することで)で素直に文脈自由文法で表現できない文法をより小さい言語クラスのパーサーで扱えることが知られている
つまり、yylex関数はRubyがCFGに収まるようにがんばる関数であるということで、複雑なのも頷けます。
改行に関しても、レキサーは文脈に応じて返す結果を出し分けています。
文法的に改行可能なところ(終わっている式の後など)なところに来た改行文字列は'\n'の終端記号として返し、逆にまだ式の途中にいることがわかる(1+ \n 2)のような状態では改行を読み飛ばします。
レキサーとパーサーの結合は疎にできているので、それぞれが個別に解析中の状態を保持します。
このような非常に複雑な状態を整理して理解可能にするために、発表ではパーサーとレキサーのオートマトンを合成するということをしていました。
ここはきちんと理解できていないのですが、Lramaの文法を拡張してlexerの状態を一緒に管理できるようにしたそうです。
こうして、レキサーは改行を読み飛ばす状態に入っているのにパーサーは還元のために改行文字が入ることを想定している(lookaheadsetに\nがいる)状態や、逆にシフトのために改行文字を受け付けるのにレキサーが\nを読み飛ばす状態などを発見できたそうです。
makenowjustさんの発表でも感じたのですが、カオスに立ち向かうために理論を活用して、成果を上げていることにとても感動しました。自分がまだまだまったくコンピュータを知らないことを痛感しましたが、大学で勉強したことを上手に現実に持ち込むとこんなにも楽しいことができるのかとわかりました。
30分の発表だったのですが、面白すぎて体感では15分くらいで終わってしまったような気がします。
本屋さん


ホワイエ二階の一角で本屋さんが開催されていました。
1日目はmameさんの「型システムのしくみ」を購入しました。ちょうどmameさんが近くにいて、直筆サイン(!)を頂いてしまいました!超嬉しい!!
早速実行....
プログラムの写し間違いでした。
下2行はコメントなんだろうな...とみせかけて!で文字列を閉じているという、ミスリーディングなコードでした。 サインまでQuine...恐ろしい...
帰りの飛行機は新刊の型の本読んでたら
— かとう (@kat0h) 2025年4月20日
まだ3章くらいまでしか読めてないけど、構造がもろインタプリタで意外
TRICK 2025: Episode I
私がRubyを使い始めたきっかけはmameさんの書いたQuineでした。2022年のTRICKは高校の帰り道に電車で見ていました。今年のRubyKaigiでは会場で見ることができて感無量です。
できたらTrickに作品を応募したかったのですが、今の私の技術力・アイデアではできませんでした。 どの作品も、クリエイティブかつ高い技術で実装されていて尊敬です。
omoikaneさんのだるまのコードは、本当に仕組みがわからなくて怖かったです。解説markdownにアスキーアート生成用のHTMLジェネレータが記載されていたのですが、あれを見る限り職人の手作業でコードが記述されているような気がします。何を食ったらあんな芸術的なコードが書けるのでしょう....
ところで、、Episode 1というのは何なんでしょう...
day2
Dissecting and Reconstructing Ruby Syntactic Structures
個人的にたのしみにしていたセッションその3
Rubyの文法の全体像を把握しつつ、parse.yをより良くしようという発表でした。
いいなと思ったのが、Perl/PHP/Rubyの構文(特に式まわり)の特徴をつかむために、lramaへの入力から構文図式を生成するツールを作ったという話でした。LTで詳しく話されていました。全体像をなんとなくつかむのにはとても便利そうです。
前にawkのパーサーを書いたときに感じたのですが、やはり式の構文を把握するというのはかなり大変な作業だと思います。Rubyも例にもれず、引数にかけるargとprimaryが分かれているなど他の部分と衝突しないために構文規則が分かれています。
理解が難しい文法の例として、カンマで区切られたリストのような規則をBNFで表現しようとすると、下のようになります。
rule1 := rule2 | rule2 ',' rule1 rule2 := 'e'
自然言語で表現すれば「カンマ区切りのe」と表現できるのに、BNFがプリミティブな記法を持たないためにこのような記述をしなければなりません。 ただでさえ難しい文法の読解をより難しくしてしまいそうです。
上の例は本当に簡単な文法ですが、それなりに長く複雑な文法のBNFを読む際、再帰的な記述から構造の本質をサッと読み取るのは大変です。
もちろん、CFGを処理する機械が扱えるのは再帰的な構造なので、「n個の連続」のような記法は糖衣構文の一種になりますが、このような記述が書けるというのはすごく便利だと思いました。
また、同じ形・意味を持っているが違う構文規則の場所で記述されている規則をジェネリクスのようにまとめて扱えるようにするというアイデアは面白いなと感じました。
parse.yが整理されてRubyの文法の本質的な難しさに集中できるようになる日が楽しみです。
ZJIT: Building a Next Generation Ruby JIT
ShopifyがYJITを作った結局としてパフォーマンスが頭打ちになってしまったので、先20年のメンテナンスを見込んで新しく設計をやり直したという話でした。
これまでのYJITはYARVのバイトコードインタプリタをベースにJITを組んでいたのに対して、ZJITは教科書的な設計のmethod-basedなJITだそうです。Prismのようなものを見ていると、Shopifyの方がこのような昔ながらの設計をすることに驚きがありました。
Ruby が YJIT でなんで速くなるのか? Lazy Basic Block Versioning をサクッと理解してみた - estie inside blogスタックVM作るなら比較高機能な命令作りたくなるけど、JITコンパイルしようとするとまた違った RISCライクな命令セットが欲しくなるのか
— かとう (@kat0h) 2025年4月17日
たしかに#rubykaigia
The Implementations of Advanced LR Parser Algorithm
個人的にたのしみにしていたセッションその4
Lramaに新しく実装したIELRという状態表生成アルゴリズムの紹介です。
Lramaの最終的な目標として、parse.yを読みやすくすることがありました。そのために注目しているのがPSLR(1)という方法で、これを使うとスキャナー(レキサー)を使わずにパースができるそうです。(厳密な定義をまだ理解できていないです,,,)Rubyにこれを導入する嬉しさとして、パーサーとレキサーが構文解析の状態を共有することで設計が簡潔になるとされています。
cf: speakerdeck.com
https://open.clemson.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1519&context=all_dissertations
PSLR(1)はIELR(1)の発展形として実装されているので、まずはIELR(1)を実装する必要があるということでLramaにIELR(1)を実装したそうです。
IELR(1)を考える前にLR(1)から考えてみることにします。
例として、上のような文法からLR(1)(スライドではCanonical LRと表現されていました)の正準オートマトン(≒パーサーの状態)を求めてみると、状態数は22個になってしまいました。
規則が数個しかない文法ですら、こんなにも多くなってしまうのですからより複雑な文法だともっとひどいことになるのは容易に予想できます。
speakerdeck.com ↑LRでJSONパーサーを書いた結果状態数がえらいことになっている
そこで考え出されたのが、LR(1)項の核が共通していて先読み記号のみ異なる規則を一つにまとめてしまうLALR(1)です。 LALR(1)はLR(1)よりも弱いですが、follow集合をつかうSLR(1)と同じ状態数でSLR(1)よりも広い(十分に実用的な)文法をパースできるということで広く使われています。
LALR(1)は十分に広い範囲をパースできるのですが、状態数の削減の過程でMysterious Conflictという現象が発生してしまうことがあります。これは、本来一つにまとめるべきでない状態をまとめてしまうことで発生するそうで、このようなパターンを回避するというのがIELR(1)の基本的なアイデアになるそうです。
つまり、扱える文法の大きさ的には
LR(1) = IELR(1) ⊃ LALR(1) ⊃ SLR(1)
状態数的には
LR(1) > IELR(1) > LALR(1) = SLR(1)
になります。
いいことづくめな気もしますが、IELR(1)では状態の計算にかかるコストがかなり重くなってしまうほか、プログラムもそれなりに複雑になってしまうそうで、スライドの後半では実装の過程でのトラブルが紹介されました。
day3
本屋さん②
うちのSchemeインタプリタにGCを実装したいので、ガーベジコレクションの本を買いました。大学に行けばあるのですが、手元に置いておきたかった。
また、inductorさんにeBPFをめっちゃ推されたのでeBPFの本も購入しました。
学生身分にとっては技術書を新本で買うのはかなりハードルが高いのですが、RubyKaigiに行ってとてもモチベーションが高くなっていたこともあり買ってしまいました。
Analyzing Ruby Code in IRB
IRBがいかにして動作しているかという発表です。
IRBは入力途中(=Rubyに属していない言語)をいい感じに扱う必要があるということで、Prismのエラートレラント機能をうまく利用しているらしい。
私たちが使うときに、Rubyの書き味を失わないようにいい感じに調整してくれるIRBの偉大さと、むずかしさを目の当たりにしました。
trickであった超小さいirb、意外と似たことしてたんだ....#rubykaigi
— かとう (@kat0h) 2025年4月18日
day4
day4は大学の知人たちとレンタカーを借り、しまなみ海道にドライブに行きました。
飛行機が19時ごろの離陸ということもあり、少し時間に余裕がない状態でしたが、伯方の島まで上陸できて大満足です。




day5〜
RubyKaigiの影響で最近やっていることを紹介します。
パーサージェネレーターをつくってみている
RubyKaigiから帰ってきてからパーサージェネレーターを自分の手で作りたい気持ちになったので、教科書を読みつつ手を動かしてプログラムを書いてみました。
はじめはLR(0)項の閉包を求めるところから始め、徐々に関数を増やしたり、データ構造を見直したりしました。
まだ全くパーサーとして動きませんが、LR(1)項にたいしてClosureとgotoと正準集合の計算をできるようになったので、もうちょっとでそれっぽくなるんじゃないかなと思っています。
自分はこれまでRubyをQuineを書く用途にしか使ってこなかったのですが、Rubyの強力な文法と組み込み関数のおかげでとても楽しくプログラミングができています。
おもちゃみたいなものでも、一回実装に落として具体的なものを書けばLramaのような大きいシステムにも立ち向かえる知識がつくんじゃないかなとおもっています。
LR(1)の正準集合を求めるプログラムできた pic.twitter.com/HaVBD6JgFt
— かとう (@kat0h) 2025年5月2日
右のせいぜい4個くらいしか非終端記号がない構文から←みたいな遷移規則ができるの、結構絶望的っちゃ絶望的 pic.twitter.com/VzeZ0htilE
— かとう (@kat0h) 2025年5月2日
2025/05/20追記
LALR(1)パーサージェネレーター(ぽいもの)が完成しました
LALR(1)パーサージェネレーターできた〜〜〜
— かとう (@kat0h) 2025年5月19日
パーサージェネレーター入門編完!(たぶん) pic.twitter.com/gl0LqwGZaq
おなじ文法に対して構文解析表がちっちゃくなるね! pic.twitter.com/SgaFTmpflO
— かとう (@kat0h) 2025年5月19日
紀伊國屋行ってきた〜 pic.twitter.com/RCnBvWMuIu
— かとう (@kat0h) 2025年5月18日
↑ドラゴンブックを買ってしまった(家計に大打撃)
追記終わり
議論するための言語をもちたい
Rubyistと会話をする中で、自分の言語能力の欠如を痛感しました。
自分の概念理解が浅いために、何度も同じ説明をしてもらってしまったり、せっかく教えて頂いたことをいまいち理解できないままにしてしまったことも多々ありました。 せっかく聞いたことを十分に自分のものにできないのはとても悔しいです。
言語は思考のための道具であるということをしっかりと心に刻み、これから勉強を続けていきたいとおもいました。
ネットワークで遊びたい
RubyKaigi NOCの活動を見て、ネットワークの構築にも興味を持ちました。
いまだにどうやってRubyKaigiのWifi網が実現されているか(特にNAT64周り)わかっていません。
自分もネットワークに詳しくなりたいなと思い、まずはということで自宅に少しだけネットワーク機器をそろえて遊び始めることにしました。 とりあえず、自宅から作業するときに大学のネットワークをうまく活用できるようにいろいろいじってみようかと思っています。
↑自宅に固定のIPv4アドレスを振ってもらったので、サークルの部員とIPsecでピアを張りました。#今日の工研 pic.twitter.com/3a7qVPiVvp
— かとう (@kat0h) 2025年4月25日
↑いまの自宅のネットワーク環境。(RTX1210+アクセスポイント+openwrt(VPN用))
Rubyのパーサーに翻弄されている
Rubyのパーサーをもっと知りたいと思って、いろいろ試した記録です。
rubyのパーサーって変数の環境持ってるのか。。たしかに。。 #rubykaigi
— かとう (@kat0h) 2025年4月16日
→持っていそう?
こうっぽい https://t.co/ZUHjf5Sv9X pic.twitter.com/wHmLGCwIR3
— かとう (@kat0h) 2025年5月2日
変数があるかどうかでレキサーの結果が変わっている様子
Rubyって regular languageに入らないよね #rubykaigia
— かとう (@kat0h) 2025年4月16日
CFGにははいる…?はず?
— かとう (@kat0h) 2025年4月16日
→厳密にはCFGに収まっていなそう?
LR属性文法について触れるときに話したいなと思っていたことを簡潔に説明していただいた模様。 https://t.co/sikV1XJWCY
— kaneko.y (@spikeolaf) 2025年4月30日
(ここで自分がRubyのパーサーがlexical feedbackをしているといっていますが、これは自分の勘違いだと思います。)
2025/05/06追記
lexical feedbackの定義によりますが、RubyでもしてるそうですそういえばLexical feedbackって定義によるとはおもうんですが、"A Simple, Possibly Correct LR Parser for C11"の用法でいうと、Rubyでもたとえばlvar_definedのように識別子が今のスコープでどのように扱われているかチェックしている部分はあります。
— kaneko.y (@spikeolaf) 2025年5月6日
追記終わり
RubyKaigiから帰ってきたあとの授業で、構文解析の話題が出てきました。ちょうどRubyKaigiで聞いてきたことも触れられていてちょっとうれしかったです。
来年のRubyKaigiどうする
次のRubyKaigiは函館で開催されるそうです。
来年もぜひ参加したいと思っています。次はもっと技術をつけて、成果を引っ提げて行きたいです。
さいごに
今回の参加費用を援助してくださったピクシブ株式会社様、私達がRubyKaigiを楽しめるように全力で支援してくださったPixivの皆さん、本当にありがとうございました!!
また、貴重な時間を割いて私と話してくださったスピーカー・コミッターの皆さん、Rubyistの皆さんありがとうございました!勉強したいことが増えてとても楽しいです。
Rubykaigiを運営してくださったスタッフの皆さん、スポンサー各社の方々、松山の方々、ありがとうございました!
またどこかでお会いしたら、どうぞよろしくお願いします。
参考文献
- 湯浅太一著, 情報系教科書シリーズ第9巻 コンパイラ, 昭晃堂